白いあしあと

今の私の、とある日に思ったこと。明日には変わってしまうかもしれない消えゆく思い。

昨日の続きを生きている

「初めて会った気がしない」って

絶対落ちるフレーズじゃないだろうか。

イケメンに限るけど。笑

 

とはいえ、「話しやすい」とか「ついつい喋りすぎる」とか

よく言われるということは

私がそれぞれの人に合わせて話しているというだけなのか?

確かに苦手だなと思う人にも言われたりする。

 

まぁそんな初対面で、

いつもは赤くなるから避けようとするお酒を飲み、

初めましてで歌を歌うという

みっともないとこを見せてしまったからか

なんかいろいろどうでもよかった日だった。

 

知り合いがお店に入ってきたから見つからないようにと

私の方だけを向いて歌った歌がすごく良くて

それだけで好きになれそうなシチュエーションだったな。

 

近いうちに転勤になるという話をされて、

こんなタイミングで内示が出て、

だから誰かと付き合うとかって微妙になってしまったと言った。

 

それは、無理だなぁと私も思った。

たった一ヶ月の出張で関係を壊したばかりなのに

いつ戻ってくるかわからない遠方への転勤。無理だ。

 

どんなにいい感じになっても心でブレーキをかける。

好きになってはいけない。

踏み込んではいけない。

 

向こうもそう思っているはずなのに

思わせぶりなやりとりをするのはモテる人の悪い癖だなぁ。

 

さよならした恋人のことを思い出して涙が出た日に

心配して電話してくれた。

優しくされたら好きになってしまうよ。

 

二度目に会った日は

行き当たりばったりのお出かけで、

試着した服を見てくれたり、荷物を持ってくれたり

デートじゃん、これはと思った。

 

私の過去の話なんてするつもりなかったのに

どうしてかそんな話になった。

引かれるかなぁと思って、あーもうこの先はないかもなぁとも思った。

まぁそれはそうかもしれないけれど。

 

それが、今までで一番アホみたいな流れでセックスすることになった。

なんか高校生みたいでおもしろかった。

「そんな話聞いたらやること一つじゃないですかーー」って

そうなる!?と思ったけど、客観的に見ればそうか。。

誘っているつもりは毛頭なかったのだけど

それでも私をそういう対象として見てくれたのかと嬉しかった。

 

確かに以前にもこの話をしてその気になった男から

執拗に迫られて断固拒否したことがある。

仕方なくしたこともある。

全然学習してないな、私。馬鹿なのか。

 

誘っておいて全然迫ってこないのが可笑しくて可愛かった。

こんなにぎこちない流れで始まったのは初めてかもしれない。

 

「キスだけしたい」

そう言ったけど、いつかの彼とは違うキスは

それだけで満足するってわけにはならなくて

次々と進んでいく工程にまだ戸惑っていた。

ムードがない流れはどうやって進めていいのかわからない。

 

時間制限があってペース配分を考えながら

一つひとつこなしていって

あまりに中性的で色気のないセックスだったけど

不思議と気持ち良かったり愛着が湧いたりするんだな。

 

小さく震えると頭を撫でてくれた。

「幸せ?」と聞かれたのは初めてだった。

あぁきっとこの人は今まで本当に好きな恋人とするセックスがメインで、

「幸せ」と言われたことが嬉しかったんだろうなと

過去が透けて見えた気がした。

そんな関係を羨ましく思った。

 

恋人同士の数だけセックスの種類があって、

相手が変わればセックスも変わる。

私は二度とあのセックスはできないのだと再確認した。

私と彼だからできたこと。

切なくも愛おしい記憶。

 

慌ただしくホテルを出て家に送っていってくれた。

次の予定まで時間がなかったのだけど

なぜか車を降りてこちらまでまわってくれた。

 

「ありがとう」「じゃあ」と言って

後ろから抱きしめてくれた時びっくりして固まった。

初めて会った時、

「身長が低い女の子を後ろからぎゅってして頭に顎を乗せたい」と

言っていた。

それを自分でやってくれているーー嬉しい。

ふふと笑って振り向いたらキスをくれた。

アパートの前、夕方の明かり。

今度は背伸びして私がキスをした。

 

慌てて車に乗り込み、じゃあ行くねって

気をつけてねってばいばいした。

 

私は本当の恋はしていないかもしれない。

だけど、こういう経験はきっとどこかで役に立つ。

人と人は正しさだけで成り立っているわけじゃない。

あまりに弱くて脆いから、いろんな形に姿は変わる。

 

全てを美しいものに変換して正当化するつもりはない。

だけど、全ては美しい私の生きた証なのだ。